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夕陽が教えてくれるもの

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都会にいると忘れてしまう感覚があります。以前の話なのですが、仕事が忙しく毎日夜中に都内から帰っていた時期がありました。たまたま夕方に帰ることができて、電車からものすごく綺麗な夕陽を見たときに、悲しいわけでもないのに涙が目の奥までこみ上げるような感覚がありました。忙しくし過ぎて干乾びそうになっていた心の中に夕陽がしみ込んでいくような感覚がありました。大人になってお金こそ稼ぎ、欲しいものを買って豊かになってる錯覚がありましたが、知らないうちに心のバランスを失いかけていたことを気が付かせてくれた瞬間でした。

その他にも自然の景色が人間にもたらすものは沢山あります。人間はどれだけ綺麗な景色を見たかによって綺麗な心が形成されていくように思います。子供の頃に感動した自然の景色は今でも鮮明に思い出しますが、大人になった今見る景色も大切な場面でしょう。子供の頃にしかできない感情、大人にしかできない感情、将来歳とってからしかできない感情がそれぞれにあります。体力、経験、価値観が成長していくなかで、その時代にしか二度と感じ取れない大切なものがあると思います。

大好きな写真家でアラスカに魅せられて自然を撮り続けた星野道夫さんのエッセーには自然との関わりについて現代人の忘れたものが書かれてあります。自然写真家・星野道夫さん著「長い旅の途上」から。

 大人になって、私たちは子ども時代をとても懐かしく思い出す。それはあの頃夢中になったさまざまな遊び、今は、もう消えてしまった原っぱ、幼なじみ・・・・・・なのだろうか。きっとそれもあるかもしれない。が、おそらく一番懐かしいものは、あの頃無意識にもっていた時間の感覚ではないだろうか。過去も未来もないただその一瞬一瞬を生きた、もう取り戻すことのできない時間への郷愁である。過去か未来とかは、私たち勝手に作り上げた幻想で、本当はそんな時間など存在しないのかもしれない。そして人間という生きものは、その幻想から悲しいくらい離れることはできない。それはきっと、ある種の素晴らしさと、それと同じくらいのつまらなさを内包しているのだろう。まだ幼い子どもを見ている時、そしてあらゆる生きものたちを見ている時、どうしようもなく魅き付けられるのは、今この瞬間を生きているという不思議さだ。
 きっと、私たちにとって、どちらの時間も必要なのだ。さまざまな過去を悔い、さまざまな明日を悩みながら、あわただしい日常に追われていく時間もまた、否定することなく大切にしたい。けれでも、大人になるにつれ、私たちはもうひとつの時間をあまりに遠い記憶の彼方に追いやっている。
P.12
 
長い旅の途上 (文春文庫)

その他の写真は、Photo Gallery をご覧下さい。
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